冬の朝だった。
会社の上司を迎えに行く途中で、いつもと違う道を走っていた。
少し慌てていたのかもしれない。スピードも少し出ていた。
橋の上に差し掛かった瞬間、「やばい」と感じた。
タイヤが路面を掴んでいない感覚。凍っていた。
ブレーキを踏んだ。
ゴーン。
路肩の縁石に左前タイヤが当たった。
あちゃ〜、と思いながら左の安全な場所に車を寄せた。
タイヤはバーストしていた。
ジャッキを出して、スペアタイヤに交換した。
歩行者がいなくてよかった。対向車が来なくてよかった。
冷や汗ものだった。
以来、橋の上は注意して走るようになった。
3回のパンク経験で分かったこと
これまでに3回、タイヤのトラブルを経験している。
1回目が、橋の上のバースト。
修理キットで何とかなる話ではなかった。スペアタイヤがあったから助かった。
2回目は釘パンク。
朝、車に乗ろうとしたときに違和感があって気づいた。ゆっくり空気が抜けていた。
ガソリンスタンドに持ち込んで「釘1本ですね、修理できます」と言われた。
修理キットは使わなかった。正直、使う自信がなかった。
3回目はバルブの劣化。
じわじわとエアが抜けていく。目視ではほとんど分からない。
空気圧チェックをしていなければ気づかないまま走り続けていた。
3回経験して分かったのは、修理キットで何とかなるのは釘パンクだけだということだ。
バーストやサイド破損は、キットではどうにもならない。
最近の車にスペアタイヤがない理由
最近の車は軽量化のため、スペアタイヤを積まない車種が増えている。
代わりに搭載されているのが「パンク修理キット」だ。
釘を踏んだ程度なら対応できる。
しかしサイドが裂けた場合は修理不能。バーストすれば走行不能。
あの橋の上のような状況では、修理キットは役に立たない。
そもそも修理キットを実際に使ったことがある人は少ないと思う。
付属のエアコンプレッサー、開けたことすらない人がほとんどではないか。
整備の仕事をしていた自分でも、ぶっつけ本番では自信がない。
「練習しておけばいい」という話もあるが、どうやって練習するんだという話でもある。
ただ、実際にパンクして立ち往生したら話は別だ。
切羽詰まれば、なんとかなるだろうという自信はある。
「どうしてもやらないといけない」という状況になれば、人はやれるものだ。
問題は、そういう気持ちにならないと動けないということで。
修理キットを使ったタイヤは内部が液剤まみれになるらしい。
タイヤ屋の人が「あれを使われると中がベトベトで掃除が大変なんですよ」と言っていた。
応急処置にはなるが、結局タイヤ交換になることも多い。
起きてからでは遅い
バルブの劣化で学んだのは、タイヤの異変は静かに進むということだ。
空気圧が低い状態で走り続ければ、タイヤの寿命も縮む。
月に一度、ガソリンを入れるついでに空気圧をチェックするだけで、リスクはかなり減る。
52,000キロ走ったところで4本まとめて交換した。
タイヤ代だけで45,600円、工賃が8,000円。合わせて5万円を超えた。
1本11,400円。それだけかかる。
空気圧チェックの手間を惜しんでタイヤを早く傷めれば、その分だけ余計な出費になる。
橋の上であの冬の朝を経験してから、タイヤのことを甘く見なくなった。
修理キットの場所と使い方を確認しておく。
ロードサービスの番号をスマホに入れておく。
それだけで、いざというときの対応が全然違う。
スペアタイヤがない時代になったからこそ、
乗る前の「備え」が昔より大事になった。


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