噛み方を教わらなかった世代の話|片噛みで奥歯を失った60代

選んだ

俺は60代になって、奥歯を失った。
原因は虫歯でも、事故でもない。
「右ばかりで噛む」という、自分の癖だった。

そして悔しいのは、こうなった理由が分かったのが、つい最近だということだ。
俺たちの世代は、噛み方を教わらなかった。
そのツケが、60代になってインプラント代40万円の「請求書」として届いた。

今の子どもは「噛み方」まで教わっているらしい

最近知って、正直ショックだった。
今の子どもは、保育園や小学校で「噛み方」や「歯の使い方」まで教わっているらしい。

前歯でかじる。
奥歯ですりつぶす。
一口の量。
口を閉じて噛む。
左右バランスよく使う。

給食の時間そのものが、こういう実地訓練の場になっているという。

なんで、俺たちの時に教えてくれなかったんだ

その話を聞いた瞬間、頭に浮かんだのは素直な疑問だった。

――なんで、俺たちの時に教えてくれなかったんだ。

「よく噛め」とは言われた。
でも、「どう噛め」とは教わっていない。
前歯と奥歯に役割があることも、
硬いものをどう扱うと歯に負担がかかるのかも、
体系的に説明された記憶はない。

右側ばかりで噛んでいた40年

俺は長年、右側ばかりで噛んでいた。
左の奥歯に違和感があったからだ。
だから無意識に、右で噛むようになっていた。

これが「片方で噛む」癖だった。
あとで調べたら、馴染みのない歯科の用語で「片噛み」と言うらしい。

左右どちらかに偏った噛み方を続けると、
使う側の歯に負担が集中する。
結果、削れ、欠け、ダメになる。
俺の右の奥歯は、まさにそうだった。

「左右均等に使う」なんて、今思えば当たり前のことだ。
でも、それを誰にも教わったことがなかった。
40年以上、右ばかりで噛み続けた末路がインプラント治療だった。

正しい噛み方を調べてみた

悔しいから、自分で調べてみた。

前歯は食べ物をかじり切るためにある。
奥歯はすりつぶすためにある。
犬歯は引き裂くためにある。

つまり、歯にはそれぞれ役割がある。
それを無視して全部前歯でガリガリやったり、
片側だけで噛み続けたりすると、
特定の歯に負担が集中する。

偏った噛み方のツケは、確実に歯に出る。
それを60年経って初めて知った。

片方で噛む癖が、なぜ40年も続いたのか

なぜ片方で噛む癖が40年も続いたのか。
答えはシンプルだ。
誰にも指摘されなかったからだ。

家族も、職場の人間も、
俺がどちら側で噛んでいるかなんて見ていない。
歯医者ですら、痛みを訴えるまでは何も言わなかった。

無意識の癖は、自分では気づけない。
だから、誰かに教わらない限り、止まらない。
これが「教わらなかった世代」の怖さだ。

制度はあった。でも、常識ではなかった

調べて分かったが、
「食育基本法」ができたのは2005年。
子どもの食育を法律で決めようと、国が動いた年だ。

ちょうど、知識や制度が整い始めた過渡期に、
俺たち60代はすでに大人になっていた。

制度は生まれた。
でも、それが「当たり前の常識」として
社会に染み込む前だった。

だから、噛み方や歯の使い方という
一生ものの基礎は、
俺たちの世代には届かなかった。

老後になって届いた「請求書」

そして今、60代になってから知る。

噛み方ひとつ、
歯の使い方ひとつが、
将来の治療費や選択の重さに直結するという現実を。

若い頃に払わなかった
「基礎教育のコスト」は、
老後になって
医療費と後悔という形で
一括請求される。

これが、俺に届いた“請求書”だ。
金額の話は別記事に書いた。
ただ言えるのは、保険のブリッジの何十倍にもなるということだ。

今からできる、たったひとつのこと

噛み方を知らなかった。
教えてもらえなかった。
そのことに、60年経って気づいた。

だから、これからは両方で噛むように気をつけて食べる
左右交互に、ゆっくりと。

たったひとつ、それだけだ。

若い人に伝えたい

もし40代以下のあなたが読んでくれているなら、これだけは伝えたい。

あなたは、噛み方を教わった世代かもしれない。
でも、実際にやっているか?

無意識に片側ばかりで噛んでいないか。
硬いものをバキッと奥歯で噛んでいないか。
知っているのと、やっているのは別だ。

俺みたいに60代でインプラント40万円の請求書をもらう前に、
今日から噛み方を意識してほしい。

教わらなかった世代の選択

文句を言っても、歯は生えない。
怒っても、時間は戻らない。

残っている選択肢はひとつしかない。

――これからは、大事に扱うしかない。

教わらなかった基礎のツケは重い。
でも、その現実を引き受けて生きるのも、60代の「選択」だと思っている。


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