なぜ私は、ギブソンJ-160Eを即決しなかったのか

迷った

——「代替案」に流れた判断が、いちばん高くついた話

これはギター選びの失敗談ではない。
人が「本当は欲しいもの」を前にしたとき、どこで判断を誤るのかという話だ。


憧れは、最初からはっきりしていた

ビートルズのアコースティックギターの音に憧れた。
特に、ジョン・レノンが使っていたギブソン J-160E の、少し乾いていて輪郭のある音。

教則DVDを見ると、同じギターを使っている。
「ああ、いい音してるな」と素直に思った。

その時点で、
理想の音の正体は、もう見えていた。


現実と理想のズレ

手元にあるのはヤマハのアコギ。
悪いギターではない。けれど、音が違う。

理想は分かっている。
でも、そこに一直線で行く覚悟がない。

この状態が、いちばん判断を狂わせる。


代替案という「もっともらしい判断」

J-160Eはエレアコだ。
だったら「エレアコ」という条件を満たせばいいのではないか。

そう考えて、
タカミネのエレアコ(約17万円)を選んだ。

条件は合っている。
価格も、J-160Eより現実的。

――でも、ここで基準がすり替わっていた。

もともとの基準:
あの音が出るか

途中からの基準:
エレアコであるか/価格が現実的か

条件は満たしている。
しかし、本質は外している。


「なんか違う」は、やはり正しかった

弾いてみると、悪くない。
むしろ良いギターだ。

それでも、
「なんか違う」。

この感覚は、あとからほぼ必ず正解になる。


そもそも、視野が狭かった

あとから気づいたことがある。

そもそも、そんな楽器店があるとは知らなかった。
近間の楽器店で済ませようという気持ちが、どこかにあった。

安物買いのゼニ失い。
その感覚に、かなり近い。

正確に言えば、
失ったのはお金だけじゃない。

選択肢を探す手間を惜しんだ結果、
自分の基準そのものを安く見積もっていた。


先輩の一言で、世界が一段広がった

そんなとき、会社のギター好きの先輩が言った。

「J-160Eの中古が、お茶の水の楽器店に出てるらしいぞ」

正直、その手の店があることすら知らなかった。
でも、その一言で判断材料が一気に揃った。

判断力が上がったわけじゃない。
視界が一段、広がっただけだった。


逃げきれない「本当に欲しいもの」

あの先輩の助言がなければ、今どうしていただろう。
おそらく、どうしても欲しい気持ちは消えず、時間をかけて調べ、別の楽器店で、結局同じギターを手に入れていたと思う。

つまり、
結果は同じだった可能性が高い。
違ったのは、そこに至るまでの時間と回り道だけだ。

人は、
本当に欲しいものからは、結局逃げきれない。

やるか/やらないか、ではなく、
いつやるか、どれだけ回り道をするかの問題になる。


やり直しの判断

すぐ電車に乗って、実物を見に行った。
そして、ギブソンJ-160Eを20万円で購入した。

その後、タカミネのエレアコは4万円で友人に譲った。

数字だけ見れば、
かなり高くついた遠回りだ。


失敗したのは「買い物」ではない

失敗したのは、
「代替案で済ませようとした判断そのもの」だった。

本当はAが欲しい。
でも遠そう、高そう、面倒そう。
だからBで一度様子を見る。

この思考は、
ギターに限らず、だいたい同じ結末になる。


Choice Noteとしての結論

Choice Noteは、正解を教えるブログではない。
判断の途中にある人が、自分の基準を見つめ直すためのノートだ。

この話でいちばん伝えたいのは、これ。

失敗の原因は、判断力の弱さではない。
選択肢を知らず、視野を狭めたまま決めてしまったことだった。

本当に欲しいものがはっきりしているなら、
基準を途中でずらさないほうがいい。

お金を節約するか。
時間と遠回りを節約するか。

少なくとも私の場合は、
基準を守って時間をかけるほうが、結果的に損が少なかった。

追記

実は、この話には少し続きがある。

J-160Eを買った当初、
正直に言うと、思っていた音とは少し違った。

嬉しくて弾いたものの、
「あれ?」という感じもあった。

そこで、ブリッジを変えたり、
弦をいろいろ試したりした。

もしかすると、
ビートルズの頃の1965年式でなければ
あの音にはならないのかもしれない。

そんなことも思った。

以前、ギター研究のサイトで質問したことがある。
そのとき言われたのは、
「とにかく強く弾いて音を出せ」というものだった。

半信半疑だったが、
それから長い時間が経った。

このギターは1997年製。
気がつけば、もう30年近くになる。

最近ふと弾くと、
弦の音というより、
ギターの箱そのものが鳴っている感じがする。

特に、
5弦・4弦・3弦の開放弦が重なったときの響きがいい。

ノー・リプライのサビで
Aコードを鳴らしたときの、あの感じだ。

うまく言葉では説明できないけれど、
ビートルズを聴いてきた人なら
なんとなく分かるかもしれない。

楽器は、
買った瞬間が完成ではないのかもしれない。

時間と一緒に、
少しずつ音が変わっていくものなのだと思う。

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