― 正解より「整理してくれる人」が欲しかった
本は読んだ。でも頭は回らなかった
母が亡くなったとき、相続の手続きについて何も知らなかったわけではない。
事前に「人が亡くなったときの手続き」みたいな本を一冊買って、目は通していた。
死亡届、年金、名義変更、相続登記……
やることは確かに書いてあった。
でも、いざその時になると、頭が回らない。
知識があっても、現実の出来事として受け止めきれず、
「何から手をつけるべきか」という判断ができなくなっていた。
役場で言った一言
結局、役場の窓口でこう言った。
「母が亡くなりました。何をどう手続きすればいいのか、全部教えてください」
恥ずかしいとは思わなかった。
誰もが何度も経験することではない。
知らなくて当たり前だと思ったからだ。
窓口の方は、
「こういう手続きは、ほとんどの方が初めてですから」
「落ち着いて、順番に説明しますので大丈夫ですよ」
そんなふうに言ってくれた気がする。
優先順位をつけながら、
「まずはここ」「次はこれ」「これは後で大丈夫です」と、
一つひとつゆっくり説明してくれた。
こちらは言われるまま、必死にメモを取るだけだった。
手続きの数に圧倒された
役場で教えてもらった手続きは、
思っていたよりずっと多かった。
死亡届。
年金の停止。
健康保険の資格喪失届。
介護保険の届け出。
銀行口座の凍結と解約。
生命保険の請求。
不動産の名義変更。
固定資産税の届出。
一つ終わるたびに、
次の書類が待っている。
しかも窓口がバラバラだ。
役場、年金事務所、法務局、銀行。
全部違う場所に、平日に行かなければならない。
悲しむ暇がなかった、
というのが正直なところだ。
泣いている場合じゃない。
期限のある手続きが次々と押し寄せてくる。
感情を横に置いて、
ただひたすら事務処理をこなすしかなかった。
司法書士にすべて任せた
不動産の名義変更などの実務は、
家を建てたときにお世話になった司法書士にお願いした。
いわば、昔からの「顔の分かる人」だったので、
安心して任せることはできた。
ただ、正直なところ、費用はそれなりにかかった。
正確な金額は覚えていないが、
請求書を見たときに
「20万とか30万くらいはいったような記憶」がある。
高いか安いかと言われれば、
責任と手間を考えれば妥当なのだろう。
でも、
- 何が問題なのか
- どこまで自分でやるべきなのか
- どこから専門家に任せるべきなのか
その整理がつかないまま
「とりあえず全部任せる」という状態で
その金額を見るのは、心理的にはやはり重かった。
相続で本当に必要なのは「最初の整理」
今振り返ると、
相続で一番欲しかったのは「正確な知識」ではなかった。
欲しかったのは、
- 全体像の整理
- 優先順位
- 自分の場合の論点
- どこに相談すればいいかの道筋
これを最初に示してくれる存在だったと思う。
役場は制度の説明はしてくれる。
司法書士や弁護士は、依頼すれば確実にやってくれる。
でもその前段階、
「そもそも自分の状況はどう整理すればいいのか」
をまとめてくれる場所は、意外と少ない。
もし今なら、こういう入口があってもいいと思う
最近知った「相続ナビ」のようなサービスは、
まさにその“最初の整理役”として使える位置づけだと感じる。
- 今の状況を入力すると
- 必要な手続きの流れが整理され
- 専門家につなぐ導線まで用意されている
いきなり士業に「依頼」するのではなく、
まず「何が問題か」「どこが論点か」を可視化する入口。
相続は一生に何度も経験することではない。
完璧に理解してから動くより、
「分からない前提」で整理してもらうほうが現実的だ。
あのときの自分に、
「まずここに状況を書き出せばいいよ」と勧められる場所があるなら、
こういうサービスだったのかもしれない。


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