「もう無理かもしれない」
在宅介護をしてる人なら、一度はそう思うはず。
俺の親が2010年に倒れて、介護は結局5年続いた。最後の3か月だけ特養に入れて、そこで看取った。
家族の介護に「もう限界」と感じてるあなたに、5年やった俺が一番伝えたいことは2つだけ。
1. ケアマネに抱え込まず相談しろ。合わないと感じたら、すぐ替えろ
2. 親が話せるうちに、何でもいいから話を聞いておけ
この2つに尽きる。
なぜそう言えるか。俺の5年を書く。
「病院は病気を治すところ」と言われた日
親は2010年に心臓の手術をした。
最後の手順で、体に通した糸を抜く予定だった。その糸が大動脈に縫い付けてあったらしく、引っ張った瞬間に血管が破れて大出血。再手術。10時間の手術が2回続いた。
体力が一気に落ちて、術後に脳卒中で左腕が動かない。心臓の回復もいまいちで、人工呼吸器が外せない。3か月から半年くらいでやっと外れたが、息苦しさは続いた。寝たきりのままリハビリしても自力では歩けない。心臓が止まった時のために、電気ショックの機械を体に入れる手術もした。
最初の病院に半年、転院してまた半年。そろそろ転院先からも「これ以上は」と言われた。
「病院は病気を治すところで、介護するところじゃないんです」
そう言われた時、頭が真っ白になった。
ケアマネは知人の看護師から紹介してもらった
役場に行って介護保険の手続きを、というのが教科書通りの流れらしい。
俺はその記憶がほとんどない。親が身体障害者手帳を持っていたので、たぶんケアマネが手続きをやってくれた。
俺がやったのは、知人の看護師にケアマネを紹介してもらうこと。これは退院前にやった。
退院してから探してたら間に合わない。在宅介護はその日から始まる。
いつから動けばいいか。入院中ならいつでもいい。気になったらすぐ聞く。聞けば安心する。
ただし要介護認定の申請から認定まで時間がかかる。退院の1〜1.5か月前が目安。
入院してる病院に「医療ソーシャルワーカー」がいる。「地域医療連携室」や「医療相談室」と書いてある窓口だ。最初の相談窓口にしていい。
退院前の相談で「家での介護」の全体像が見えた
ケアマネと嫁と俺の3人で相談した。
- 介護用ベッドの手配
- トイレ
- オムツ
- 食事
- デイサービスの内容
オムツが安く手配できたのも、オマルを買ったのも、全部ケアマネに教えてもらった。
ここで強く言いたい。
ケアマネに、嫌なこと、困ってることを抱え込まずに相談しろ
家族だけで悩んでも何も進まない。プロに頼っていい。
デイサービスだけじゃ、すぐに無理になった
最初はデイサービスに通った。朝9時から16時まで。
「これで日中は休める」と思った。
でも違った。9時に出して16時に帰ってくる。あっという間。朝の準備と、帰ってきてからの介護で、結局一日が終わる。
泊まりのショートステイも使った。3〜4日預けた。これも足りない。
ケアマネと相談しながら、預ける期間を延ばしていった。20日くらいだったかな、はっきり覚えていない。
「できるだけ家にいないように」運用するしかなかった
家にいる10〜15日に1回の「自宅に戻ってくる1日」が、本当にきつかった。飯、トイレ、オムツ替え。大便は座ってしたい、小便も本当は座ってしたい。
正直に書く。下の世話は、嫁にやらせた。
俺は逃げて回ってた。今でも時々、嫁から恨み節が出る。黙って聞くしかない。反論できない。
お金の話。親の貯金で凌いだ
家計は苦しかった。
でも、なんとかなった。親の貯金にある程度の蓄えがあって、それで回した。これがなかったらどうなっていたか分からない。
特養に入ってからは、親の年金でやりくりできた記憶がある。
合わないケアマネは、すぐ替えていい
5年やって思うのは、ケアマネはみんな同じじゃないということ。
合う合わないは絶対ある。
合わないと感じたら、抱え込まずに替えていい。最初は「失礼かな」と思うかもしれないが、こっちは5年戦う。合わない人と組んでる余裕はない。
交換の窓口は地域包括支援センターでいい。
罪悪感はある。「失礼かな」「意地悪してるみたい」
それでも替えていい。こっちは長期戦だ。
「早く死んでくれ」と思った日もあった
正直に書く。
5年やってると、「いくら親でも、早く死んでくれ」と思う日が来る。
そう思った自分を責めて、「いや、親孝行だ」と思い直す。その繰り返し。
今思うと、聞いておけばよかったことが多すぎる
亡くなる3か月前に特養に入って、そこで親は逝った。
今振り返って一番後悔してるのは——親が話せるうちに、何でもいいから話を聞いておけばよかったということ。
昔のこと、好きだったもの、若い頃の話、なんでもよかった。
倒れてから5年、寝たきりで、ほとんど会話らしい会話ができなかった。
まとめ:在宅介護の限界を感じたら
最後にもう一度言わせて。
1. ケアマネに抱え込まず相談しろ。合わないと感じたら、すぐ替えろ
2. 親が話せるうちに、何でもいいから話を聞いておけ
この2つだけ覚えて帰ってほしい。
あなたはどの段階? もし入院中なら、明日にでも病院の医療ソーシャルワーカーに声かけてみてくれ。
参考|今の介護の相場とケアマネの探し方
これから介護を始める人向けに、調べた情報を載せておく。
在宅介護の月額相場(2024年・生命保険文化センター調べ)
- 在宅介護のみ:月5.3万円
- 介護全体の月額平均:9.0万円
- 一時費用(介護ベッド・住宅改造など):平均47.2万円
- 介護期間の平均:55か月(4年7か月)
俺の5年とほぼ同じ期間だ。
この数字、安く見えるが——
在宅5.3万円って、家族の負担が一切入っていない。
介護サービスの自己負担と、ものの費用だけ。
家族の労働時間と精神的負担は1円もカウントされない。在宅5年やったが、嫁にも俺にも1円も入らない。「在宅は安く済む」と言われるのは、家族がタダ働きしてるからだ。
施設14万円は1日約5000円。介護保険の自己負担込みでこの金額なら、家族の負担を肩代わりしてもらってると考えれば、むしろ妥当な水準かもしれない。
自己負担の上限(介護サービス分・1割負担の場合)
- 要介護3:月27,048円 ← 俺の親はここだったようだ
- 要介護5:月36,217円
- 一般所得世帯は月44,400円を超えた分は「高額介護サービス費」として戻ってくる
でも、これは「介護サービスの自己負担」だけだ
実際はこれに加えて、以下が全部自費。
- ショートステイの食費(1日約2,300円)
- ショートステイの滞在費(1日3,000〜5,000円)
- オムツ代
- 福祉用具レンタルの自己負担
- 食費・日用品
俺の場合、「家にいないように」運用してたから、ショートステイをほぼ毎月20日近く使ってた。その分の食費・滞在費は介護保険の対象外で、全額自己負担。
記憶では、月10万〜15万くらい払ってたような気がする。通帳を見ないと正確には分からないが、「介護保険があるから安い」と思って構えていると、現実は数字以上にきつい。
ケアマネージャーの正しい探し方
- 市区町村の介護保険課
- 地域包括支援センター(教科書通りの起点)
- 病院からの紹介(通院中ならアリ)
俺は知人の看護師から紹介してもらったが、教科書通りなら地域包括支援センターが王道。
関連|介護が終わったあとの話
介護が終わると、今度は「親が亡くなったあとの手続き」が待っている。役場、銀行、保険、年金——何から手をつければいいか分からない。
俺もそうだった。先に読んでおくと心の準備ができる。

