60代で電子ピアノに挑戦して挫折——独学で続かなかった本当の理由

迷った

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66歳のとき、電子ピアノを買った。

正確にはカシオの光ナビゲーションキーボード、LK-526。価格は39,680円。ココチモの通販で見つけて、気づいたらポチっていた。

きっかけは若い頃から好きだった洋楽だ。

好きな洋楽のあのイントロ——転がるようなピアノが、何十年経っても頭から離れなかった。「あれが弾けたらカッコいいな」。ただそれだけの理由で、66歳のおじさんは楽器を買った。

練習していた曲なら少し弾けるようになった。でも本物にはほど遠い。そして3年経った今、そのキーボードは部屋の隅に追いやられている。

これは、60代で電子ピアノに挑戦して挫折した、私の正直な記録だ。

なぜ買ったのか——青春の一曲への憧れ

僕らの世代にとって、洋楽ロックは青春そのものだった。

中でも好きな一曲のピアノは特別だった。あのイントロを聴くたびに、「いつか自分の指であの音を出してみたい」と思っていた。若い頃は仕事に追われてそれどころじゃなかった。製造業で40年、気がつけば定年を過ぎていた。

そんなとき、ネットで光ナビゲーションキーボードを見つけた。鍵盤が光って弾く場所を教えてくれるという。「これなら楽譜が読めなくても弾けるかもしれない」——そう思った瞬間、指は注文ボタンの上にあった。

39,680円。安くはないが、青春の夢を叶える入場料だと思えば高くもない。そう自分に言い聞かせた。

光ナビは良かった。でも曲が多すぎた

届いたキーボードを箱から出して、電源を入れた瞬間のワクワクは覚えている。

光ナビゲーション機能は、正直に言って良かった。光る鍵盤を追いかけるだけで、なんとなく曲の形になる。楽譜が読めない自分でも「弾いている感覚」が味わえた。初心者にとって、この「弾けた気になれる」体験は大きい。

もしこれからキーボードを探しているなら、光ナビ付きモデルは初心者の入口として悪くない。実際に弾いた私がそう思う。

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ところが、問題はそこからだった。

内蔵曲が多すぎるのだ。あれもいい曲だ、これもいい曲だ——次々に気になって、結局どれも中途半端になった。「今日はこの曲をやろう」と思って始めても、途中で別の曲の光が気になる。目移りしているうちに1時間が過ぎて、結局何も身についていない。

ビュッフェで皿に盛りすぎて、どれも一口ずつしか食べられなかった——あの感覚に似ている。

そして隅に追いやられた——正直に言う

最初の1ヶ月は、毎日鍵盤に触った。

練習していた曲の触りくらいは弾けるようになった。でも、あの憧れのイントロには、まるで手が届かない。本物はやっぱり天才だった。当たり前だが。

2ヶ月目から、触る日が減った。3ヶ月目には週に一度。半年後には月に一度も怪しくなり、気づけば部屋の隅に追いやられていた。

言い訳はいくらでもあった。「忙しい」「他にやることがある」「優先順位が低い」——もっともらしい理由を並べていた。

でも正直に言えば、言い訳なんだな

やりたい欲望が低かったとか、優先順位がどうとか、そういうことじゃない。いや、そういうことでもあるんだが、もっと根っこにある理由がある。それに気づくのに3年かかった。

独学で続かなかった本当の理由——一人だった

いちいち最初からひとつひとつ覚える気がない。

これも言い訳だ。でもこの言い訳の奥には、「一人でコツコツ積み上げる」ことへのしんどさがある。

誰かと一緒にやるとか、だったらやったかもしれない。

バンドを組める親しいやつがいたら、続いていたかもしれない。下手でも笑いながら合わせてくれる仲間がいたら。弾けたとき「いいじゃん」と言ってくれる人。つまずいたとき「ここはこうだよ」と教えてくれる人。今週はここまで弾こう、と目標を一緒に決めてくれる人。そういう伴走者がいたら、たぶん続いていた。

独学の一番の敵は、難しさじゃない。孤独だ。

光ナビは弾く場所を教えてくれた。でも「次に何をすべきか」は教えてくれなかった。内蔵曲が200曲あっても、「あなたはまずこの1曲を仕上げなさい」と言ってくれる人はいなかった。

道具は揃っていた。足りなかったのは、道筋と伴走者だった。

同じ夢を持つあなたへ——始める前に知っておいてほしいこと

もしこの記事を読んでいるあなたが、「自分もピアノを弾いてみたい」と思っているなら。あるいは「買ったけど続かなかった」と同じ後悔を抱えているなら。

私の3年間の挫折から、伝えられることがある。

楽器選びは間違っていなかった

光ナビゲーション機能付きのキーボードは、初心者の入口としては良い選択だった。楽譜が読めなくても「弾いている感覚」を味わえる。問題は楽器じゃなかった。

独学には「道筋」がいる

内蔵曲が多いことは、メリットでもありデメリットでもある。選択肢が多すぎると迷子になる。「まずこの1曲」「次はこれ」と順番を示してくれるカリキュラムがあるだけで、独学の景色は変わる。

一番大事なのは「伴走者」

続けられる人と続けられない人の違いは、才能でも根性でもない。一緒に歩いてくれる人がいるかどうかだ。

今はオンラインでピアノレッスンを受けられる時代だ。自宅にいながら、自分のペースで、プロに教えてもらえる。私が挫折した3年前にも存在していたが、「独学でいける」と思い込んでいた。いけなかった。

自宅にいながら、画面越しにプロが「次はこれを弾きましょう」と導いてくれる。あの頃の自分に教えてやりたかった。

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もし過去の自分にひとつだけアドバイスできるなら、こう言う。

「キーボードを買うなら、同時にレッスンも申し込め」

道具だけ揃えて満足するな。弾けるようになる仕組みごと手に入れろ。

まとめ——隅に追いやられたキーボードは、無駄じゃなかった

部屋の隅にあるカシオのキーボードを、今でもときどき眺める。

39,680円は無駄だったか? 正直、そう思ったこともある。でも今は少し違う見方をしている。

あのキーボードが教えてくれたのは、「弾けたらカッコいい」という気持ちは本物だったということ。そして、気持ちだけでは続かないということ。足りなかったのは才能じゃない。道筋と伴走者だ。

60代でも、70代でも、ピアノを始めるのに遅すぎることはない。ただし、一人で始めるな。

これが、3年かけて部屋の隅のキーボードが教えてくれた、一番大事な答えだ。

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