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築34年、53坪の一戸建て。火災保険の建物の補償額は2,000万円だ。
同じ広さで建て直すと、今は4,400万〜6,290万円かかる。2,000万では、うちの半分も建たない。
それでも、俺はこの保険を続ける。
火災保険なんて、どうせぼったくりだろう。そう思いながらChatGPTに保険証券を見せた。
返ってきた答えは「今入り直すよりずっと条件がいい契約です」だった。
だが、それで安心して終わりにしたのが、前の俺だ。相場より安いかどうかは、保険を続ける理由にならない。続ける理由は一つしかない。いくら欲しいのか、だ。
どうせこれも、ぼったくりだろうと思っていた
生命保険も、がん保険も、自動車保険も。正直に言って、俺はこれまで何度も「やられた」と感じてきた。だから次は火災保険だと思った。よく分からないまま高い保険料を払い続けているだけではないのか。
更新のハガキが届いたのを機に、無料のFPではなくChatGPTに聞いた。保険証券をスマホで撮って、アップロードするだけ。文字を一文字も打ち込まなくていい。これがちょー楽だった。
無料FPにしなかった理由は一つ。無料には理由がある。向こうにも売りたい商品がある。ChatGPTは商品を売らない。
「相場より得」で止まっていた
結果は、建物2,000万円、家財500万円、地震1,000万円。10年分をまとめて払う長期契約で、その割引が今も効いている。今同じ条件で入り直すと、保険料はもっと高くなる水準だった。
ここで俺は一度、満足してしまった。
でも生命保険をやめるとき、俺は「いくら欲しいから、いくら払う」で決めたはずだ。火災保険だけ、その物差しを当てていなかった。
火災保険は補償額で決める|いくら欲しくて、いくら払っているか
うちの契約は、火災2,000万円・地震1,000万円
証券の数字を、その物差しで並べ直す。2,000万円は、たぶん家を建てたときの値段だ。細かいことは覚えていない。それで正しいと思っていた。
| 契約の補償額 | 10年で払う額 | |
|---|---|---|
| 火災 | 2,000万円 | 443,150円 |
| 地震 | 1,000万円 | 128,760円 |
| 同じ家を建て直す額(53坪) | 4,400万〜6,290万円 | (払う額ではない) |
同じ家を建て直すと、4,400万〜6,290万円
この2,000万円で、うちの家がもう一度建つのか。AIに調べてもらった。
能登半島地震のあと、石川県が「いしかわ型復興住宅」という一覧を出していた。被災した人が建て直す家の間取りと値段を、県内の工務店に出させたものだ。今は55種類のプランが載っている。俺は、そんな制度があるのも知らなかった。
その55プランの平均が、約2,252万円。
だが、中身を見ると足りていなかった。55プランの延べ床面積は平均19.6坪(約65㎡・2LDKくらい)、いちばん大きいプランでも37.3坪。うちの53坪に当たるものは1つも無い。坪単価に直すと平均118万円、いちばん安いプランでも83万円だ。
その単価で53坪を積むと、4,400万〜6,290万円になる。外構も家具も入っていない額でだ。

2,000万では、うちの半分も建たない。
つまり、火災の2,000万円でも、同じ家は建たない。
これは俺にとって、この見直しでいちばん大きい発見だった。「相場より条件がいい」と言われて安心していた契約が、いくら欲しいかで測ったら足りていなかった。補償額を、まともに考えていなかった。
地震保険は、火災保険の半分まで
地震保険は、火災保険の30〜50%の範囲でしか掛けられないと法律で決まっている。俺は上限いっぱいの1,000万円だ。火災の保険金額を上げれば、地震もそれに連れて上がる。だから考えるのは地震ではなく、火災の2,000万円のほうだ。
地震保険のこと(能登の地震で50万円を受け取った話も)は、地震保険を解約できない理由|いらないと分かった60代の本音に書いた。
火災保険で、俺が勘違いしていたこと二つ
約款を取り寄せて読んだら、思い込みが二つ崩れた。
一つ。自分の不始末で燃やしても、出る
自分の過失について出ないと書いてあるのは「故意、重大な過失、法令違反」の場合だ。普通の不注意は払われる。むしろ火災保険は、自分がやらかしたときのためにある。そして「隣の火事なら隣に払わせられる」も逆だった。失火責任法があって、隣に重大な過失がなければ請求できない。もらい火は自分の保険で直すのが基本になる(ガス爆発など失火でない場合や、借家で大家に対する責任は別の扱いになる)。
二つ。直さないと、出ない
今の火災保険の約款には「損害が発生した日から起算して2年の期間内に復旧しなければ、保険金を支払わない」とある。60代で建て直すのか。無理じゃないか。
調べると、この決まりは2022年(令和4年)10月以降に始まった契約からだった。2017年(平成29年)に入った俺の契約には付いていない。付くのは、2027年(令和9年)3月の次の更新からだ。
全焼のときは、先に保険会社へ連絡して認められれば、建てる場所や家の使い道を変えられる。これは会社によって違うので、自分の約款を見たほうがいい。
保険は「人生が台無しになること」にだけ使う
『お金の大学』の線引きがそのまま当てはまる。家を失えば人生の土台が崩れるから、保険で備える。家財は買い直せるから、蓄えで受ける。
家財の500万円は、次の更新で外すかどうか、もう一度考える。
60代の火災保険、続けることにした
相場より得だから、ではない。同じ家は建たないと分かったうえで、それでも2,000万円は要るからだ。無ければ、次の住まいを考えることすらできない。その備えに10年44万円なら払う。そう決めたから続ける。
燃えたらどうするか。正直、考えたことがなかった。小さい家を建てるかもしれない。今の建築費(木造で1坪83.9万円)なら、2,000万円で建つのは24坪くらいだ。53坪を建て直さないなら、補償額を上げる理由はない。次の更新は2027年(令和9年)3月。そのとき、もう一度この額を見る。
同じ世代に伝えたい3ステップはこうだ。
- 保険証券を出して、建物の補償額を見る
- その額で、燃えたあとに何が建つかを計算する(1坪あたりの建築費×坪数)
- 足りないなら上げる。多すぎるなら下げる。相場は見なくていい
参考:火災保険の一括見積もり
俺は一括見積もりを取ったことがない。ネットで相場を調べて、このぐらいが妥当だろうと思っていただけだ。
補償額を上げたら、保険料はいくら上がるのか。同じ家・同じ補償額で、何社かの保険料を一度に出してもらえる。違いが出るのは火災保険の分で、地震保険の分はどの会社も同じ値段だ。
出典
- 石川県「いしかわ型復興住宅 概算工事価格表」(2026年7月1日時点・55プランの延床は平均64.85㎡=19.6坪、最大123.38㎡=37.3坪。外構・家具は含まない)
- 地震保険に関する法律 第2条
- 失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)
- 三井住友海上「GKすまいの保険 ご契約のしおり」(2024年10月改定・建物条項 第4条・第9条)
- 三井住友海上「2022年10月以降始期のご契約 補償内容に関するご案内」(復旧の決まり)
- 住宅産業新聞「木造住宅建築費、上昇に歯止め掛からず」(建設物価調査会の木造住宅建築費)
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